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特別座談会  黒部に築く建築とまちづくりの未来のかたち

日本設計 本社オフィス 都市のようなワークプレイス

日本設計 本社オフィス 新しいワークプレイスの在り方

IDEAS

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訪ねてもらいたい─下関に息づく、海と出会う場
関門海峡を望む 下関市立しものせき水族館「海響館」(以下、「海響館」)は、旧下関水族館の建て替えとして2001年に開館し、2010年の「ペンギン村」増築を経て、2025年に大規模改修工事を行いリニューアルオープンしました。 私たち日本設計は約25年にわたり設計者として携わり、まちとともに成長する水族館の姿を見守ってきました。今回、入社2年・4年目の日本設計社員3名が改修を経て進化した海響館を訪ねました。 レポーターの3名。海響館メインエントランス前にて。 左から山口 悠黎(構造設計群)、佐藤 碧(第1環境・設備設計群)、津熊 春樹(第2建築設計群) 地域に根差した展示と建築 門司港からフェリーに乗って関門海峡を渡ること約5分。下関(唐戸ターミナル)に近づくと、対岸に曲面の大屋根を持つ特徴的な姿が見えてきます。この大屋根は、かつて下関が捕鯨の基地であったことや、旧水族館が市民に親しまれた、鯨の形をした「鯨館」への記憶から着想を得て、鯨のフォルムをイメージしてデザインされたものです。 山口:全長約132mの大屋根は、曲率の異なる2つの曲面が上部で一体となる複雑な形状をしており、鉄骨単層ラチスによるシェル構造です。 フェリーから近づくと、そのスケール感と独特の曲面が、まるで海峡の風景に溶け込んで見えます。 フェリーからの外観   エントランス前の正面外観。 3階屋上広場から見るイルカスタジアム。スタジアム上部の大屋根は厚さ950mm、幅44m。   海岸からイルカプールを覗く窓 津熊:イルカスタジアムは雄大な大屋根と下関の海に囲まれた開放的な空間です。館の外を歩いていてもアシカの鳴き声が聞こえたり、イルカを鑑賞できる小窓が海岸に面して開けられていることで、通りゆく人々も無料で楽しめ、広く街や市民に開かれた水族館ですね。       「小松★ワローホール」。シロナガスクジラの全身骨格標本はノルウェーから運ばれた。 佐藤:1階の「小松★ワローホール」へも自由に入ることができます。日本唯一のシロナガスクジラの全身骨格標本が展示されているのが、鯨が有名な下関ならではです。             山口:ホールに浮かぶ半球体の「海峡展望デッキ」は海中に浮かぶ船をモチーフにしており、カーテンウォールの方立てを用いた吊り構造です。下に柱がなく浮いているように見えるほか、骨格標本をブリッジなど様々な場所から立体的に鑑賞することができます。   佐藤:水槽展示を見る途中で、「海峡展望デッキ」から関門海峡を見ながら一休みできる動線も特徴的だと思いました。               「海峡展望デッキ」から関門海峡を見る。 「小松★ワローホール」を外から見る夕景。「海峡展望デッキ」が浮かび上がる。 津熊:外壁のレンガ調タイルは、対岸の門司港レトロ地区の整備方針と合わせたもので、海峡を挟んだ2つのまちが自然とつながり、門司港の歴史的建造物とも調和しているように感じました。   時代の変化に応じて進化していく 2001年の開館当時は限られたスペースの中で楽しんでもらえるよう、通り抜けできる通路やホールと繋ぐブリッジなどが計画されました。24年の歳月を経て、順路の分かりにくさを改善するため、2024年から2025年に行われた大規模改修ではサインの刷新や可動壁の追加など、動線のわかりやすさが大きく向上しました。 山口:水槽自体は変更しなくとも内容を見直すことで、展示の一部も生まれ変わっています。3階は「関門の海」と「世界のフグ」、「下関の川」といった地域に根差した展示、2階は自然環境とそこに棲む生き物をテーマに展示しています。 佐藤:セントラルホールからエスカレーターを抜けて、最初の展示は「関門海峡」水槽です。関門海峡を借景に、水槽の水面がその奥に広がる海の水平線と重なり、階段を下りながらまるで海の中に潜っていくような体験ができます。建築と展示が一体となって、来館者を海の中へと誘い込むように設計されています。 津熊:平面が海岸線に対して並行でなく角度を持って配置されているのは、「関門海峡」水槽の正面奥に関門橋が見えるよう意図されています。 「関門の海」展示。正面が「関門海峡」水槽、右が「日本海」水槽。奥に関門海峡と関門橋。   「世界のフグ」展示は、フグの街・下関ならではで、世界一の種類数を誇るフグ目魚類の展示です。 「世界のフグ」サイン 佐藤:館長さんによると、今回の改修でフグの展示をアピールするサインを新しく追加され、地域性の特色ある展示として、またフグへの熱い思いが詰まった展示というメッセージを強く打ち出したそうです。         2025年の改修は建築設備の更新も大きな目的でした。バックヤードに目を向けると、表には見えない多くの工夫が詰まっていました。 佐藤:飼育水を消毒するための装置には海水電気分解による次亜塩素ナトリウムを使用しており、本年、新設したアシカの「ひれあしビーチ」には新しくオゾンの装置を導入したそうです。 濾過方式は、生物や水槽構造などによって密閉式と開放式を使い分けていました。大水槽用の開放式の濾過槽はバックヤードの中でも大きな面積を占めています。 開放式濾過槽(写真左)が並ぶバックヤード。 2001年の開館当時からコージェネレーションシステムを導入して省エネルギーが図られていますが、改修でこの機器も更新されました。 佐藤:年月をかけて分かってきた使い勝手や来館者の声を受けた展示方法の更新、技術の進歩に応じた設備の更新など、時代の変化に応じて水族館の在り方が変わってきたことが分かりました。   展示の裏側にある命を守る工夫 海響館は関門海峡に面した立地を生かし、海水を水槽に採り入れています。 海岸横から海水を取り入れ、地下の受水槽へ海水を送る。 山口:最大2.8tの重量を持ち上げられるホイストクレーンにより、新しく運んできた魚を1階の搬入口から4階の水槽まで搬入することがあるそうです。魚にとってできるだけダメージが少なく水槽に移すことが重要なため、特にイワシのような擦れに弱い魚はホイストクレーンで海水を入れた大きなタンクごと水槽まで搬入できることが効果的だそうです。 4階バックヤードにあるマンボウの予備水槽を上から見る。天井には搬入口から続くホイストクレーンのレール。 「関門の海」の水槽を上から見る。この上部にもホイストクレーンのレールが続く。 イワシの群れが泳ぐ海中トンネル。 濾過槽と木製メンテナンス通路。 佐藤:水族館の一般来館者として展示を見ている時には上部のレールには全く気づかないですね。 津熊:バックヤードを見学し驚いたのは、血管のように張り巡らされた配管や、木製のメンテナンス通路です。木製の通路は水族館では一般的な方法だそうですが、海水による腐食を避けるため、付け替えもしやすくコストも安い木が採用されるそうです。いかに安全に生き物を育てるかというバックヤードと、表からは見えない世界観を保った展示、二つを両立する合理的な設計が水族館では重要だと学びました。   佐藤:生き物のことを第一に考えた展示方法や建築のあり方が印象的でした。たとえば今年の改修では、省エネルギーに配慮し、別途実施されたものも含めてLED照明への更新が行われたそうですが、現状では海藻の生育に効果が実証されているLED照明がないため、海藻の水槽では水銀式照明のままにしているとのことです。 山口:生き物が本来持つ習性や行動を展示することも大事にしていると伺いました。2010年に増築された「ペンギン村」は、ペンギンの泳いでいる姿を見ていただくことを大事にした最大水深6mの深いプールが特徴です。また「フンボルトペンギン特別保護区」の展示は、野生生息地のチリまで視察に行き、飼育展示環境を再現したそうです。 ペンギン村の水槽。 佐藤:生き物を飼育している以上、24時間、設備機械は止められません。設備設計の責任を一層強く感じました。また近年、海水の温度上昇により適切な温度にするのにコストがかかると館長さんから伺いました。環境問題とも密接に関係していることを改めて感じています。   ここでしかできない空間体験 北九州市と下関市では現在、人口減少が課題となっており、点在している観光施設をつなぐ、ウォーターフロント一帯での地域活性化が目指されています。海峡エリアの将来性にも期待が寄せられます。 山口: 通過型から滞在型の観光地への転換が求められていると聞きました。海響館の近くには「リゾナーレ下関」(設計:日本設計)も2025年12月に開業します。このエリアの魅力がより多くの人に伝わるといいと思います。 津熊:水族館は観光だけでなく、海の生態を学ぶ学習のための施設と言えます。海響館では、地域に根差した展示や周辺環境を取り込んだ建築のあり方から地域性を感じました。 関門海峡上空から見る海響館(写真右)とリゾナーレ下関(写真左)。©川澄・小林研二写真事務所   津熊:「水族館だけで人を呼ぶのは難しい時代」と館長さんは話していました。インターネット等を介して多くの情報が得られる今だからこそ、匂いや音、空間の広がりといった現地でしか得られない五感に響く体験が価値になる時代です。設計者として、どんな「体験」を届けられるかが問われていることを実感しました。   生き物のように有機的な大屋根に包み込まれる空間、海中へ潜るような鑑賞体験、ここでしか出会えない風景。海響館には、場所性と建築・展示が融合し、来館者の「感覚に訴える空間体験」がちりばめられていました。   一緒に訪ねてもらいたい!下関周辺街歩きマップ 下関市立しものせき水族館「海響館」と合わせて今回レポーター3名が訪れた、街歩きマップをご紹介します。 クリックするとPDFが開きます 2025年11月6日 特記なき撮影:日本設計広報室
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建築の楽しさを未来へ 城東小学校での授業と構造ワークショップ
「建物ってどうやって建てるの?」「設計って、どんな仕事?」城東小学校でワークショップを行いました。
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RC部材のピン接合、一般化の実現へ
私たちは、建築構造における新たな可能性を追求し、RC部材(鉄筋コンクリート部材)の接合方法として広く用いられる「剛接合」に対して、「ピン接合」に挑戦しました。この手法により柱や接合部の応力を軽減し、柱サイズの縮小、接合部やスラブの配筋削減、設計の自由度向上といったメリットを実現し新たな選択肢を提供します。このディテールの開発背景とプロセス、そして成果についてご紹介します。   ピン接合のアイデアと実現 RC部材は剛接合が主流ですが、私たちはPCa柱(プレキャストコンクリート柱)とRCスラブを「ピン接合」とすることで、接合部にかかる応力を軽減するアイデアを実現しました。このアイデアは、2018年に竣工した伊予市本庁舎の設計過程で生まれたものです。当初、剛接合での検討を進めていましたが、地震時の応力集中によりスラブの配筋が過剰となっていました。そこで、柱頭部に円筒形コッターを設け、硬質ゴムシートで部材間の縁を切ることにより、応力伝達を無くすピン接合の発想が生まれました。 同庁舎は免震構造を採用しているため層間変形角が小さく、構造性能評価を通して本ディテールの採用が認められましたが、私たちは通常の耐震構造にも活用できるディテールの一般化を目指し、株式会社建研の協力を得て、実験と改良を重ねました。 伊予市本庁舎 撮影/川澄・小林研二写真事務所   伊予市本庁舎で採用したピン接合のディテール   実験と改良で課題を克服 ピン接合のディテールの有効性を検証するため、伊予市本庁舎のディテールを基に実大試験を実施した結果、剛接合時に比べて剛性が1/20まで低減され、免震構造のように層間変形角が小さい状態においてはピン接合として機能することが確認されました。一方で、層間変形角が大きくなるとコッター部分が破損する課題も明らかになりました。 接合部の実大試験 大変形時のコッター部の破損状況   この課題を克服するために、コッターの形状や硬質ゴムの仕様などを詳細に検討し、回転性能の向上を試みました。数多くの検証を行うため、東京電機大学の協力の下、軽量な木の試験体を使った性能確認試験で複数案の回転剛性を比較検討し改良を重ねました。 木の試験体を使った性能確認試験 木の試験体から得られた結果を基に、最終的に円錐台形のコッターを考案し、改めてコンクリートの実大試験体を製作して回転性能を確認しました。当初の形状では大変形時にコッターが破損していましたが、今回の試験ではその問題は発生せず課題を克服したことが確認されました。   建築技術性能証明の取得 これら3回の試験を経て、2024年1月、日本建築総合試験所(GBRC)から建築技術性能証明を取得しました。これによりディテールの一般化が実現し、免震構造に限らず通常の耐震構造の建物への適用が可能となりました。適用条件として「柱軸力が200kN以下」「本接合部の上階に柱は接続しない」などを定めていますが、これらを満たすことで多くの建物での活用が可能となります。 また、解析の結果、剛接合と比べて柱頭の曲げモーメントが約92%低減することが確認されています。構造解析上ピン接合として扱うことができるため、設計方法はよりシンプルになります。このディテールの採用により、柱サイズの縮小が可能となり、意匠設計の自由度も広がります。 一般化が実現したピン接合の円錐台形コッター   本開発は、多くの関係者の協力と地道な改善の積み重ねによって実現しました。この技術は建築設計に新たな可能性をもたらし、今後さらに多くの建物で採用されることを目指しています。

PROJECTS

NEWS

2025.12.25
ニュース
広報誌「think++magazine 13」を発行しました
広報誌「think++magazine 13」を発行しました。
2025.12.10
ニュース
2025年12月10日付 人事について
2025年12月10日付の人事についてお知らせします。
2025.12.03
ニュース
年末年始休業日のお知らせ
平素は格別のお引き立てをいただき、厚く御礼申し上げます。 当社では、下記の期間を年末年始休業とさせていただきます。 年末年始休業期間 本  社:2025年12月26日(金)午後 ~ 2026年1月4日(日) 札幌支社:2025年12月25日(木)     ~ 2026年1月4日(日) 中部支社:2025年12月26日(金)午後 ~ 2026年1月4日(日) 関西支社:2025年12月26日(金)午後 ~ 2026年1月4日(日) 九州支社:2025年12月26日(金)午後 ~ 2026年1月4日(日)
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