熊本城特別見学通路

熊本城特別見学通路

俯瞰の夕景。既存樹木や遺構を避けたルートが設定されている。床には県産材の檜を使用。

熊本城特別見学通路

石垣や虎口を飛び越える約50mの大スパンアーチ構造。

熊本城特別見学通路

円弧を描く桁により1本脚で架構が成立するリングガーダー構造。

熊本城特別見学通路

熊本城天守閣、二様の石垣(武者返し)を望む視点場。

熊本城特別見学通路

ライトアップされた夜景。

熊本城特別見学通路

全体断面パース。復旧工事そのものを見せる、全長350mの見学ルート。

説明
2016年4月に熊本県全域を襲った熊本地震で、特別史跡熊本城跡は甚大な被害を受けました。石垣は全体で79,000㎡のうち、約3割に当たる23,600㎡が崩落し、復旧基本計画では復旧に20年かかるとされています。復旧工事を最優先とするならば、立ち入りを制限した状況で復旧工事に集中するという手法が考えられましたが、一方で熊本城は重要な観光資源で、地域経済の活性化にとっても来城者向けに公開できる範囲をなるべく早く広げる必要がありました。そこで復旧工事を安全に行いながら、来城者への公開範囲を飛躍的に早めるために見学通路を提案しました。「復旧工事そのものを見せる」という「開かれた復旧工事の提案」は、新たな観光資源の開拓のみならず、これからの文化財公開に向けた新たな一歩につながりました。
特別見学通路の実現のためには、特別史跡内として厳しく制限された中で、難しい設計条件と熊本城の景観に配慮する必要がありました。地中及び地表面に多くの遺構が確認されているため、堀削や樹木伐根はできず、杭を打つことも出来ないので、置き基礎による計画を行い、石垣の崩落が想定される範囲には原則基礎は配置せず、安全性を担保しています。また復旧工事が継続的に行われる予定のため、工事車両動線の確保と、安全確保のため工事動線と分離した見学通路を設ける必要がありました。さらに敷地内の多くの樹木を極力伐採しないような配置も検討しました。
こうした特殊な与条件から、針の穴を縫うように全長350mの見学ルートを設定しました。その結果、50mもの大スパンアーチ構造や、円弧を描く桁により1本脚で架構が成立する「リングガーダー構造」を採用しました。また床板を支える架構は三角形のラチスフレームで薄くし、熊本城や市街地の景観を楽しむための視点場を設けました。
また、床には県産材の檜を使用しています。
概要
名称
熊本城特別見学通路
建築主
熊本市
所在地
熊本県熊本市
地図
主用途
屋外見学通路
竣工
2020年4月
延床面積
219.70㎡
構造
S造 一部SRC造
階数
1F
写真撮影
益永 研司
受賞
2020年 AACA賞(特別賞)
2020年 日本空間デザイン賞(KUKAN OF THE YEAR / GOLD PRIZE)
2020年 都市公園等コンクール(国土交通大臣賞)
2020年 グッドデザイン賞グッドフォーカス賞(防災・復興デザイン)
2019年 CM選奨(熊本城復旧基本計画策定支援業務)