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2024.03.07
OMO7大阪 by 星野リゾートの外装膜 前編

帆船のような白い膜は、新今宮の街の新たな船出を見守るシンボルとなる

OMO7大阪 by 星野リゾートは、星野リゾートによる大阪初のホテルで、周辺エリアの魅力、地域の個性を楽しむことができる都市型ホテルです。
JR大阪環状線新今宮駅のプラットフォームに降り立つと、視線の高さにあるパブリックスペース「OMOベース」と緑豊かな広場「みやぐりん」、そして大きな帆船のような白い膜で覆われた姿が目に飛び込んできます。
この特徴的な外観は、建物のコンセプトや環境性能、施工のしやすさなど様々な観点から考案されました。設計を担当した日本設計プロジェクト管理部フェロー松尾和生と、建築設計群  瀬野建人へのインタビューを通して、そのアイデアと実現までの一端をご紹介します。

 

ブランドコンセプトを体現する外装

「みやぐりん」から見た、白い膜で覆われた特徴的な外観。 提供/OMO7大阪 by 星野リゾート

クライアントからの最初のリクエストは、「『おもしろい、おもてなし』というブランドコンセプトを表現したワクワクする建築にしたい」「星野リゾートらしく、環境技術を可視化させたデザインにしたい」といったものでした。

「最初は『おもしろい、とは何か』といった根源的な議論から始め、そういった中から、一見何の建物か分からない、ランダムなものが持つ面白さといったキーワードが生まれました。」(瀬野)

建築設計群・瀬野建人

計画地の歴史的文脈を紐解くなかで、この地が古代は海であったこと、行き交う北前船が商売のまち大阪をつくりあげたことに思いを馳せ、帆船のイメージをデザインに重ねていきました。また、古くから日本にある風呂敷などで『包む』というおもてなしの気持ちの表現から、客室を包み込むように、柔らかい素材である膜で外装をつくるという発想が生まれたのです。
膜の小さなエレメントに壁面を分節し、それをランダムに集積させたデザインは比較的スケールの小さい建物が建ち並ぶ街に大きな建築が建つことに対して、圧迫感の軽減にも寄与しています。
夜には客室から外装膜を通して漏れる柔らかい光により、都市の中で建物自体が行燈のように光ります。また、イベントに応じた特殊映像を映すスクリーンとしても楽しむことができます。

プロジェクト管理部フェロー・松尾和生

「かつてこの地はディープな印象があり、大阪に住む人もなかなか足を踏み入れないエリアであったこの街を明るく元気にしたいという想いがあり、それがこの場所ならではの外装デザインを生み出す原動力となっています。また、この土地は活断層の近傍にあるため免震構造としており、中間層免震より上の高層部を白い膜で覆うことで、浮遊感と軽やかさを持たせています。」(松尾)

季節に応じた映像を映し出す外装膜。 提供/OMO7大阪 by 星野リゾート

基本計画の初期から膜のデザインは生まれ、その後1か月半ほどという短期間で外装膜のデザインの骨格はできあがっていきました。


基本計画時の外装のスケッチ。左上から右下にかけて、「ランダムさ」というキーワードから徐々に外装膜を実現するためのディテールを考察している様子が見て取れる。

「今まで誰も見たことがないものなので、クライアントと時間をかけてイメージを共有していきました。このホテルには外装膜以外の提案はない、と私たちは確信を持っていたので、東京の別の建物の現場で膜に見立てた模造紙を窓に貼り見え方を検証したり、CG動画を作ったりなど、外装膜がもつ可能性を伝えました。最終的に現場で施工された外装膜を見て、イメージしていた以上の光景を目の前にし、クライアントも驚きとともに喜んでくださっていたと思います。」(松尾)

 

外装膜による環境デザイン

OMO7大阪 by 星野リゾートでは、熱容量の大きなコンクリートを剝き出しにせず、熱容量の小さな膜材で包むことで、建物外壁への直達日射量を軽減し、幅100m高さ50mという大きな外壁面の温度を下げています。日本人が古くから簾や障子で築いてきた外皮による遮熱の知恵を、現代的な素材である膜で再構築しているとも言えます。
周辺を含めた簡易的な表面温度解析によると、躯体温度が周辺建物よりも下がることが分かりました。ホテル前に広がる緑地「みやぐりん」への放射熱低減効果をもち、ヒートアイランド現象の緩和に寄与しています。


8月の14時における建物の表面温度の解析結果

同時に外装膜は、内部空間への自然光を拡散しながら室内へ取り入れる効果も持っています。
外装膜により、客室内に差し込む日射量が夏場で30~45%軽減されること、夏場の現場作業環境の暑さが軽減されることがシミュレーションによって確認されました。空調起動時に必要なエネルギー消費量を抑え、オペレーショナル・カーボンの削減に貢献しています。


外装膜越しに自然光が入る客室室内。 提供/OMO7大阪 by 星野リゾート

「この遮熱性能は施工の現場段階でも体感できていました。ガラスの入った階はコンクリート自体から発する熱と太陽熱によりかなり蒸し暑くなるのですが、外装膜が下階から施工されていくと、施工された階では明らかに涼しく感じられたのです。」(松尾)

 

後編では、アルミ型材と膜で外装をつくるという日本初の試みを実現させるまでの工夫と技術をご紹介します。

特記なき画像提供/日本設計

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