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2023.11.02
ジブリパーク ジブリの大倉庫・青春の丘・どんどこ森

ジブリパークがみせる多様な色彩と質感の世界

2022年11月1日、「愛・地球博記念公園」内に、「ジブリパーク(第1期)」(チケット予約制)が開園しました。
そこではスタジオジブリ作品の世界観を表現するために、多様なマテリアルが用いられています。ここでは、本物の素材と古き佳き技術への挑戦、細部にまでかけられた熱量をご紹介します。

1. 昔からあるものを用いる

ジブリパークでは、昨今の建築の現場ではあまり見られなくなった仕上げが使用されています。そこには現代的な素材だけではなく、昔からあるものを使いたい、来場者が素材を触って感じられる、無垢の素材を使いたいという想いが反映されています。
そのひとつは、「本物の左官を使いたい」という想いから実現した、ジブリの大倉庫に用いられている大津壁と漆喰です。江戸時代から使われてきた⼤津壁は、スサと少量の⽯灰を混ぜた材料を塗りつけ、鏝で何度も押さえることで緻密に仕上げる⼟壁の⼀種です。今では他の建材の発達や職⼈の減少によりあまり使われていません。


大津壁の鮮やかな青の壁面(写真中央) 撮影:川澄・小林研二写真事務所

また、映像展示室の入口前の床などに用いられている、⼈造研ぎ出し仕上げも昭和中期まで盛んに使われていましたが、近年は職⼈の減少などにより施⼯事例が少なくなった仕上げの一つです。⼈造研ぎ出し仕上げとはセメント系モルタルに種⽯を塗付け、硬化後に研磨機やグラインダーを使⽤し研ぎだす⼯法です。ジブリの⼤倉庫では、レトロな街並みからなる世界観をつくり出すため、4箇所で⼈造研ぎ出し仕上げを採⽤しました。

映像展示室ホワイエ
撮影:川澄・小林研二写真事務所

 

2. 膨大な検討から生まれた多種多様な仕上げ

ジブリの大倉庫において、看板建築と呼ばれる壁面はカラフルな仕上げです。そのひとつが木材の塗装です。広場空間に面した木の壁材は不燃処理が求められるため、針葉樹に限定されます。その中で試行錯誤を繰り返しながら、色や表面処理を決定していきました。


カラフルな看板建築(写真左) 撮影:川澄・小林研二写真事務所

 


木塗装の例。貼り方や部材寸法、特殊部位は着彩を行い事前に確認しました。

また、ジブリの大倉庫内において、使用範囲が多い複層仕上塗材は色だけでなく骨材の比率、工法、パターンにより最終的な仕上げは多種多様なため、仕上がりのイメージを統一するために事前整理を行いました。
①看板建築部分(建物の外壁風):骨材の主張はやや抑え、凹凸感はキレイ目とする
②土木的な部分(建築物ではない屋外的な空間を演出する部分):骨材の主張を強め、凹凸は粗目とする
③ イタリアンスタッコ調の部分:つるつるした仕上がりを検討し適した塗壁材を使用
なお「キレイ目」も「粗目」も、オリジナルの特注配合です。
色や仕上がりの違いにより、膨大な数の仕上げが使い分けられています。
DICカラーチップなどにより指定された発色のよい色を再現するのは大変困難なことでした。色番号をもとに調色を行うと、彩度が低下したり、イメージの色がなかなか実現せず、最終的には基準色をベースとし、標準ビビットカラーを配合する比率を宮崎吾朗監督より指示いただき施工者と色をつくり出しました。


「粗目」の仕上げの例。 撮影:川澄・小林研二写真事務所

 

3.世界を作り出すための細部

一見、気づかないような細部にも、スタジオジブリ作品の世界観を表現するためのこだわりと工夫が詰まっています。
大倉庫の大階段に面した看板建築を彩る、華麗な装飾を施した支柱と欄間にも製作の工夫がありました。

撮影:川澄・小林研二写真事務所

この支柱と欄間には、金属を溶かして、型(鋳型)に流しこみ冷やし固める鋳造という製作技術が用いられています。
⽀柱をつくるために、まず切削加工で樹脂型を製作。これが鋳物原型となります。⽀柱の形状は数種類ありますが、手摺を取り付けるための「耳」の形状のみが異なるため、メインの原型とは別に、付け替え式の「耳」原型を用意することで、ほぼ1体の原型から数種類の鋳造品を作り分けています。

原型の制作。右は付け替え式の型。


原型に砂をかぶせ固め、鋳型を制作。原型を取り除いた後の空洞へ溶解した金属を流し込む。
冷えて固まった後、鋳型を壊し製品を取り出す。


手摺りの樹脂型での形状検討。

また、大倉庫内の看板建築の中には、以前から建っていたバラックのような風合いを出すため、トタンの壁にあえて「錆の仕上げ」をしている部分もあります。⼈⽬に近い下部は本物の錆を発⽣させ、さらにサビ⾵の仕上げ塗装と併用しています。


撮影:川澄・小林研二写真事務所


大倉庫内看板建築トタン板。本物の錆、錆風塗装と使い分けられている。

 

また、企画展示室の入り口前の壁や天井には、スタジオジブリの作品に映る星空を表現しています。

撮影:川澄・小林研二写真事務所

青い壁や天井に散りばめられた星は真鍮でつくられており、象嵌(ぞうがん:ある素材に別の素材を嵌め込む工芸装飾の技法)という技法が用いられています。
天井(塗装用パテ面)とモルタル補修面(壁)それぞれで用いられる材料において、真鍮の星が落ちない強度を保てるか、仕上がりはどうかなど細かく検討をしました。

特記無し画像は提供:日本設計
©Studio Ghibli

 

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