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2023.11.02
ジブリパーク ジブリの大倉庫・青春の丘・どんどこ森

温水プールが大変貌 「ジブリの大倉庫」が描く新たな物語


写真:川澄・小林研二写真事務所

スタジオジブリ作品の世界観を表現した「ジブリパーク」(チケット予約制)は、愛・地球博記念公園内において2022年11月に第1期が開園しました。メインエリアとなる「ジブリの大倉庫」(以下、大倉庫)は、企画展示や映像展示室などがあり、スタジオジブリ作品の世界観をリアルに体験できる施設です。
大倉庫はかつて温水プールだった建物をコンバージョンするという大胆な手法が取られました。
本計画は、公園に既にある景観・環境・自然を生かしつつ、新たに加わるジブリパークの施設が既存の環境になじみ、公園全体が存続し続けることが重視されました。そのため、老朽化が進み、閉鎖が検討されていた温水プール棟も、取り壊さずに改修することが決まりました。


改修前の温水プール

大倉庫は内部の温水プール施設を撤去し外装とこれらを支える構造の主フレームを残した大空間内に、展示室等を増築し、入れ子状の構成とする非常に稀な改修です。既存のプール施設の造形物も残し、意匠は新たにリメイクしています。

 


環境断面 イラスト:イスナデザイン

 
写真どちらも:川澄・小林研二写真事務所

色鮮やかなタイルが美しい中央階段のある広場空間では、展示室の外側の壁や屋根をまるで屋外のように設え、床の仕上げも屋外のように舗装しました。緑化植栽も大規模に行い、スタジオジブリ作品に登場する建物や街路等のような懐かしさを感じる屋外的空間を演出しました。
また、もともと温水プールだった空間特性を生かし、既存のトップライト採光やカーテンウォールから、自然光が降り注ぎます。一方で、省エネルギーの性能向上を目指し、カーテンウォールは既存の枠をそのままに、高い断熱性を持つ真空ペアガラスに交換し、可動式ロールスクリーンを設置。トップライトも日射遮蔽効果も高い遮熱フィルムを実装するとともに、水平可動式の天井膜を設置し、熱負荷の低減を図りました。
カーテンウォールに換気窓、建物頂部の方位毎に排煙窓を設けることで、外部風の風向がどの方向であっても一定の風量の自然換気ができるように配慮しています。
換気窓・排煙窓や水平可動膜・ロールスクリーンは、季節・時間・外部条件に基づく連動制御を設定し、膜・窓ともにより長く開放することで、建物内にいながら来館者が開放感を五感で味わえる空間となっています。


広場空間はトップライト採光を再利用した。自然光が差し込み、屋外のような空間になっている
写真:川澄・小林研二写真事務所

敷地周辺の地形も生かしています。計画施設は地盤の低い「こいの池」と約一層分地盤の高い大芝生広場の間に位置しています。この公園の高低差を計画に取り込み、公園と連続するように設計しました。
結果的に屋外~外部的要素を持つ広場空間(以下、広場空間 )~展示室等の完全内部空間の3層構成が誕生。こうした多様な眺めを楽しめる視点場が生まれ、大倉庫内は、まるで一つの街の中を散策しているような体験ができるのです。
既存の設備や造形物を再利用しながら、省エネルギー性能の向上に取り組みました。同時に、スタジオジブリ作品の世界観を表現すべく、様々な工法や技術を用いたことで、「ジブリの大倉庫」は、唯一無二の公園施設となりました。


すでにある景観や環境、自然を活かしてつくられた「ジブリの大倉庫」(写真中央の建物の左)。右側は、アイススケート場として利用を続けている

©Studio Ghibli

 

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