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    押上・業平の「ことまちプロジェクト」
2024.04.09
ことまちプロジェクト

「こと」を生み出し、「まち」の魅力を高める
押上・業平の「ことまちプロジェクト」

東京都墨田区の押上・業平エリアは東京スカイツリーのある下町です。日本設計は現在、同エリアで「ことまちプロジェクト」と名付けられたまちづくりに携わっています。3月には新しい街の魅力をつくりだす拠点「ことまちベース」が誕生しました。

 

押上・業平エリアは、東京スカイツリー開業以来、国内外から多くの来街者が集まっています。一方、スカイツリータウンの南側に位置する浅草通り沿道のエリアは、かつて路面電車沿道の商店街として賑わいをみせていましたが、後継者問題などにより多くの店が閉店し、現在はマンションとの共存により「1Fレベルの商店(=賑わい)の連続性が途絶えているまち」となっています。北十間川や旧電車通りの広幅員道路を挟んでいることもあり、賑わいのある中心地からやや離れた雰囲気です。

「さらに住みやすく、楽しく、みんなに愛されるようなまちにしたい」――。そのような思いから、2023年に「ことまちプロジェクト」がスタート。日本設計プロジェクトデザイン群は東武不動産が事務局を務める「ことまちプロジェクト推進会議」のメンバーとしてマスタープラン型の都市計画の視点と、タクティカル・アーバニズム(長期的な都市の変化を目指し、小さなアクションを積み上げていくアプローチ)の考え方による小規模なまちづくり 、その双方からのアプローチを実施するディレクションを行っています。

まず私たちはこのエリアのまちづくりにおいて、重要なポイントは「1Fレベルの賑わいの連続性」だと考えました。まちを見渡すと間もなく更新時期を迎える建物が多くあり、また低容積・低利用な土地も見受けられました。まずは東武不動産の所有地を中心に、建替の際には1Fに賑わいの要素となる店舗等を誘致し、中上層階には宿泊機能も擁した多様な住環境を整備することで、街全体でのコミュニケーションを活発化させることから始めようと考えました。そして、まちづくりのプロセスの中では、東武不動産だけでなく、地域住民をはじめとした、さまざまな方に参画してもらうことが不可欠であると認識しました。

プロジェクト中心エリア
墨田区業平の浅草通りと北十間川沿い、押上の四ツ目通り沿いエリア

また、プロジェクトを推進する中で、まちづくりの拠点となる場所の創設を計画しました。東武不動産が浅草通りに所有する老朽化した長屋他は、シャッターが閉ざされ、まちのにぎわいを損ねる要因となっていたため、リノベーションして活用し、賑わうまちの姿を具体的に示すことで、まちづくりに賛同してくださる方の輪を広げることを目指しました。耐震性の問題から長屋のリノベーションは実現しませんでしたが、「ことまちプロジェクト」第一弾として2023年2月にワークショップを開催。来場者(9日間で202名)にまちの好きなところを付箋や地図に書いてもらったり、解体する美容室の壁面を白くして子どもたちに絵を描いてもらったりすることで、まちづくりに関心を持ってもらえるような工夫をしました。また、長屋の古材を活用してカードホルダーなどの雑貨をつくるイベントを開催したほか、さらには長屋に残されていた古家具を希望者に譲るなどして、古い記憶も大切にしました。

「プロジェクト始動後、地域の方々の声を直接聞けたのは初めてで、とても貴重な経験でした。まちの方々は『下町が好き』で、『ふらっと立ち寄れる場所や子どもたちが楽しめる場所』『賑わいはあるけれども快適に暮らせること』を求めていることがわかりました。同時に、『まちにはもっとお店が増えてほしい(個人商店に頑張って欲しい)』『ソラマチ以外には特にこれといったものがない』という課題も抱えていることが明らかになりました。また、こうしたエリアにおいては、一時的な空き地や既存建物を活用して、様々な魅力を作り出しながら機能更新する重要性も感じました」。(プロジェクトデザイン群・中居有紀)

まちに関するアンケートを行う
日本設計プロジェクトデザイン群の中居有紀(左)。
解体前の長屋を利用し、さまざまなワークショップを開催しました。
まちの好きなところや、30年後のまちの姿などを付箋に書いてもらい、ガラスに描かれた木の枝に貼ってもらいました。 建物引き面の一部を白く塗り、子どもたちが絵を自由に描けるようにしました。
長屋から家具を運搬する
日本設計プロジェクトデザイン群の古田靖二(中央)。
推進会議には、建築・都市計画が専門の千葉大学・鈴木弘樹准教授の研究室も参加しています。「ことまちベース」の広場に導入する予定の人工芝の実証実験を研究室とのコラボレーションでも行うなどして、データに基づく新しい取り組みの提案に反映させています。
工事着工後に設置された仮囲いは、日本設計の中居がまちの賑わいが感じられるイラストを描きました。

 

そして2024年春、この土地に、地元住民、来街者、仕掛け人が集まって知恵を出し合い、新しいまちの魅力を創出する拠点「ことまちベース」が開業します。「ことまちベース」は、ワークショップやイベントを通じてまちの魅力を考え、実践するスペース「ことまちラボ」、人々が憩い交流する「こと庭(広場)」、飲食店などの店舗が並ぶ「にぎわい施設」の3つの機能で構成された複合施設です。まちと人をつなぎ、その交流で生まれた新たな「もの」や「こと」をまちの魅力として活かし、さらなる交流や新たな魅力を生み出すサイクルを目指します。

「ことまちベース」は、あくまで「暫定施設」として位置づけられており、将来的には中高層建築(前述)に生まれ変わる予定です。「経済的な面から考えれば、暫定的な施設を建てることは非合理的かもしれません。ただ、まちの賑わいを活性化させ、かつ東武不動産が目指すまちづくりを地域の方々へ具体的に示す上で、ことまちベースは大きな役割を担うと思います」(日本設計プロジェクトデザイン群・古田靖二)

ことまちベースの完成予想イラスト

 

◆こと庭(広場)
・地元住民から来街者まで多様な人が憩い交流する場 ・浅草通りの多様な活用に向けた様々な試みのできる実証実験の場

◆ことまちラボ
・ワークショップやイベント、社会実験等を通じて、街の賑わいを産む「街の魅力」について考え、試行錯誤し、実践できる実証実験スペース

◆にぎわい施設
・広場やテラスの活用のためのサービス・支援施設であるとともに、そのものが街の魅力となる店舗を併設
・ことまちプロジェクトの取組みを分かりやすくプレゼンスできる、地域ならではの魅力をもつ店舗を誘致

 

東武不動産と一緒に進めるまちづくり「ことまちプロジェクト」 はまだまだ始まったばかりです。活動領域を広げるとともに、地域住民をはじめとする多様なプレーヤーの参画、そして「公・民・学」の連携の継続を行います。教育サービスを提供する株式会社リバネスも参加し、押上・業平エリアをフィールドに、「街のにぎわいづくり」をテーマに人材の育成にも取り組んでいます。

空地や空き家の活用により、将来的には「北十間川沿道の歩行者専用化と空間活用」「浅草通りの車線減・歩行者空間拡充と空間活用」といった公共空間活用の連携も視野に入れています。

今回、「ことまちベース」というハード面が一つ形になったことで、まちづくりの機運がいっそう高まることを期待しています。「今年度は主に、まちづくりや地域交流の拠点として「ことまちベース(ラボ)」のオープンに向けて取り組みました。まだ十分に地域の方から意見をお聞きできていないので、今後は道路等の公共空間を活用した実証実験を行い 、地域の皆さんも巻き込んだ意見収集に注力する予定です。そういったコミュニケーションを大切にして、プロジェクトの方針に反映させ、活動を少しずつまちに広げていきたいと考えています」(中居)

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