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2024.02.19
虎ノ門二丁目地区 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

都市の課題解決に挑む 虎の門病院建て替え計画と再開発事業 

病院機能を継続しながら建て替えを実現

都市計画は人々にとってより豊かで快適なまちの姿を描くことです。
日本設計は創立以来、さまざまな都市計画に携わってきました。その中で培われた知見を活かし、刻々と変化する都市の課題解決に取り組んでいます。その事例の一つとして、国家公務員共済組連合会虎の門病院の建て替え計画をご紹介します。

市街地にある高度大規模病院が、老朽化や災害医療機能の強化、患者の療養環境の向上のために建て替えを望んでも、都市部では移転先の代替地を見つけることは容易ではありません。現地で建て替えを行う場合も、業務の縮小や休止が必要になり、従来の医療体制を継続させることは困難です。一方、高齢化社会では住み慣れた土地で医療サービスを受けられることが今後ますます重要になってきます。

外資系企業や大使館が多く集まる、国際色豊かなエリアに位置し、最先端の高度医療を提供する虎の門病院も、築50年以上となる施設の老朽化、十分に機能を発揮することが難しい施設構成、環状2号線の整備に伴い敷地が減少したことなどから、再整備によりこれらの課題を解決する必要がありました。
虎の門病院のような都市部の単体大規模病院における建て替えは非常に難しい事業でしたが、再開発事業に組み込むことで、病院機能を継続しながら再開発地区内で建て替えを実現しました。私たち日本設計は、2011年から本計画の基本構想と基本計画に参画。都市計画と病院施設設計のチームが一体となり計画を立案しました。

南西から見た虎の門病院。右奥の建設中の建物が業務棟

但し、再開発事業における病院の建て替え事例はまれです。それは、再開発事業の成立条件と病院の建て替えにおける要望に乖離があるためです。例えば、再開発事業においては地域貢献に必要な空地や緑地を確保するために複合一棟化することが多くありますが、一般的に病院は機能拡張などを目的とした増改築が不可欠で、単独棟を理想とします。加えて、病院側は機能拡充のため、現状からの面積増加が必須になりますが、再開発事業においては建て替え前の床面積を確保することが難しいという問題に直面します。
しかしながら本計画の場合、病院を別棟化できる敷地だったことに加え、虎の門病院の高度医療機能を都市再生特別地区における公共貢献要素として位置づけることで再開発事業としての容積増が可能となり、建て替えが実現しました。

日本設計は、事業の実現に向けて都市計画や病院施設設計といった各分野の専門家たちがチームで取り組みました。当時、医療施設設計部長だった伊藤元晴は「『再開発事業』と『病院の建て替え』はという価値を互いに理解できたことが、事業を円滑に進められた一つのポイントとなった」と振り返ります。都市計画群の志摩陽一郎も「病院の災害時対応機能を、再開発事業の計画地に建てられるオフィスと連携・拡張させることを都市計画の貢献要素としており、都市計画段階から病院の施設計画にも影響が及ぶため、それぞれのチームが協力する必要があった」と話します。

こうして私たちは計画の初期段階から各分野の知見を集結させ、3つの提案を行いました。


虎ノ門二丁目地区の建て替え計画図

虎の門病院建て替え計画における基本構想、基本計画時の体制図

 

病院の貢献要素を再開発事業に統合

一つ目は「国際競争力の強化」です。
虎ノ門が国際色豊かなエリアであることから、国際水準の病院として整備することで、地域の国際化に一層貢献できると考え、国際メディカルサービスセンターを計画しました。
二つ目は「大規模病院の機能更新と良好な都市基盤整備」です。
既存病院の敷地は環状2号線と赤坂・虎ノ門緑道をつなぐ重要な位置にありますが、起伏が大きく高低差があるため、安全で快適な歩行者空間が確保できていませんでした。そこで、周辺地域をつなぐ、快適で豊かな交通ネットワークを実現する方法を提案しました。日本設計は長らく赤坂・虎ノ門エリアの再開発に携わり、約850mにわたって緑でつなぐ「赤坂・虎ノ門緑道」の整備で、周辺地域と連携した緑のネットワークを推進してきました。今回の再開発地区も緑道の一画に位置しており、私たちがこれまで本エリアで培ってきた知見を反映させることができました。
そして三つ目が「防災対応力の強化と都市環境の向上」。
都内最高レベルの災害拠点として施設全体を複合的に活用する「災害時拡張ER(Emergency Room)」を提案しました。

本事業では、都市計画を提案する段階で、運営面とともに、公共貢献にも配慮した建物の規模や外形、配置計画を早期に決定しました。「都心のビジネス街に立地することから、患者とオフィスワーカーそれぞれの環境を守る施設構成を目指しました。例えば、患者さんが入院する高層部に配置した病棟エリアと、多くの外来者が訪問する低層部に配置された外来や中央診療機能を明確に分離するために中間階にスカイロビーを設け、病棟階とスカイロビーで入院生活が完結する計画としました」(ライフサイエンスプロジェクト部・本田真吾)

その後、病院の設計は他社の手に委ねられましたが、基本計画段階での面積や建物高さなどは、完成時まで大きな変化はありません。外観デザインについても、基本計画段階で景観協議にて決定されたため、ほぼそのままの姿で完成に至りました。

 

再開発事業は現在も進行中です。2025年2月には移転前の虎の門病院の場所に日本設計・三菱地所設計共同企業体が基本設計、デザインディレクション、工事監理を担当する地上38階、地下2階の業務棟が竣工予定です。国際ビジネスセンターとして機能する業務棟には防災ヘリポートが整備されるほか、緑のネットワークを形成する広場や歩行者デッキが整備され、豊かな都市空間を創ります。

虎ノ門二丁目地区第一種再開発事業の完成イメージ。左が病院棟、右奥が業務棟

ライフサイエンスプロジェクト部長来野炎は「総合設計事務所である日本設計が、さまざまな分野で長年培ってきたものが一つの形になったプロジェクトだった」と言います。志摩は「都市部の病院建て替えは、再開発事業として取り組むことが一つの答えである可能性を示せたのではないか」と話します。
高齢化社会において、再開発事業に医療施設を取り入れる重要性がいっそう高まっています。「本プロジェクトの知見は、病院に限らず高齢者施設といったほかの施設の機能更新の際に活かせるかもしれません」と来野。日本設計は今後も都市に新たな価値を生み出し、社会に貢献してまいります。

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