Autodeskと包括契約を更新。データドリブン設計の実践に向けた新たなステージへ
株式会社日本設計と、米国 Autodesk 社は、2024 年 10 月に、4 度目の包括契約(EBA Enterprise Business Agreement ※1)を更新しました。
両社は、2014 年9月より、次世代 BIM の実現を目指してパートナーシップを結び、建物のライフサイクルを通じて、オーナー、利用者に BIM の最大限の効果をもたらす建築、都市環境を提供すべく協業してきました。BIMの確立・構築のフェーズから実践のフェーズへ移行する中、この度の更新により、データドリブン設計の基盤構築に向け、新たなステージへの挑戦を続けてまいります。
BIMは、すでに試行・定着期から活用期に入っており、堅実な運用、実践を遂行するため、よりデータやCDE(共通データ環境)の活用が重要となっています。
すでに運用されているデジタルツールやソリューションとの連携および構築も変革期を迎え、日本設計では、次世代デジタル基盤構想(※2)のもとデータドリブン設計の実現を目指し、全社横断的に全体最適を目指したデータ活用の成功事例構築に向けて取り組んでいます。
両社は、これまでの3年間、 BIMワークフローの確立と実践を積み重ね、高品質・高効率な設計の実現を目指し、BIMとデータベース連携の構築とプロジェクト活用、DX推進とデータドリブン設計の基盤構築の準備を進めてまいりました。
今後の3年間は、さらなるDX推進に向けて、全体最適化を目指したデータドリブン設計の確立と実践に注力します。
全体最適を目指したDX推進とデータドリブン設計の確立と実践
日本設計では、2022年から検討を開始しているDX推進ワーキンググループと2023年10月に設立した「情報システムデザイン部」を中心に、デジタル基盤の整備やデジタルでの設計ワークフローの再整理を行っています。この取り組みの一環として、DX推進に向けた全社横断的な体制を構築し、デジタルでのデータフローに適したプロジェクト推進の仕組みを強化しています。また、全社的な取り組みに繋がるように、マネージメント層を対象としたワークショップ開催などを通じて、DXの理解の醸成を図るとともに、データに基づいたプロジェクトマネージメントを推進しています。
Autodeskでは、オートデスク コンサルティングを通じて、日本設計の取り組みを支援しています。この支援ではBIMやDXに関する世界的な経験に基づき、Autodesk 製品や他社ソリューションを組み合わせ、データを最大限に活用するための戦略やソリューションの提案や実行支援を行います。このサービスを活用することで、現在のデータフロー評価、解決すべき課題の明確化、ソリューションの開発、ソリューションの実現可能性検証などを実施します。これにより、日本設計でのこれまでの知見をデータベースにし、プロジェクト遂行におけるデータに基づいたプロジェクトマネージメントや設計業務、品質管理の実現を加速させます。
両社は協業を通じて、BIMとデータベースを連携させることによる、全体最適を視野に入れたデータドリブンな設計手法を確立します。
・BIMとデータベース連携による設計の効率化
・BIMとデータベースを活用したデータプレチェックによる設計の高品質化
・BIMを活用したトータルカーボン算出の試行・実践を通じ、エネルギー効率や環境を最適化するデザインの推進
これまでの取り組みの概要
1.BIMワークフローの実践
日本設計では、BIM本格運用に向けて、運用体制構築と社内教育を推進しています。国内においては、建築BIM推進会議を中心に国内のBIM推進が加速化し、BIM図面審査やその後に予定されているBIMデータ審査、既に開始されている官庁営繕事業でのBIM指定など、BIMを活用する社会環境が整い始めています。日本設計は、これらの環境整備に貢献するとともに、自社内での運用体制を強化し、官庁案件におけるBIM指定プロジェクトにも取り組んでいます。これらの取り組みを通じて、BIMの実践活用を着実に進めています。
また、UR都市機構との共同研究(※3)を通じて、BIMガイドラインの次の段階として、BIMのサンプルモデルやテンプレートが公開され、BIMデータの具体例も示されています。
さらに、Autodesk Construction Cloud® を活用することで、ワークフローの実運用を実践し、データ活用の効率性を一層向上させる取り組みを行っています。
2.設計の高品質化・高効率化につながるBIMの実践
日本設計では、BIMデータの有効活用を通じて、設計から維持管理・運用までの一貫した取り組みを進めています。
設計段階の分野間でのデータ連携をさらに深めることで、BIMの効率的な活用方法を模索し、具体のプロジェクトでの試行を積み重ね、実践に向けた準備を整えました。超高層建築物などの大型プロジェクトにおいても、基本設計から実施設計を通してBIM活用の実績が増えてきています。また、中小規模においては意匠・構造・設備・電気全分野でBIM活用とBIMによる成果物を作成したプロジェクトも出てきています。
さらに、実施設計でのBIM活用を積み重ね、BIMに適した成果物を見極めた上で、BIMとCADを併用する運用方針を確立しました。この方針により、設計の生産性と効率性を向上させるとともに、設計品質のさらなる向上を実現しています。
また、BIMデータの有効活用に向けて、竣工後の維持管理・運用時点でのBIM-FM(施設管理)の実践を通じて知見を積み重ねており、オフィス移転を機に本社の資産管理で活用した事例や、築20年以上経過したJRタワーでの実例もでてきています。さらには、日本設計版環境DX(※4)のデジタル基盤を活用して収集した環境センサー情報や各エリアの人数情報等のセンシングデータを、3D上にヒートマップ・グラフ表示可能なデジタルツインのAutodesk Tandem®と連携した実運用を開始しています。この内容に関するニュースはこちら
これらの取り組みにより、設計段階から運用管理までを一貫して支えるデータドリブンな体制が整いつつあります。
※1 EBA(Enterprise Business Agreement):大企業ユーザ向けの包括契約。 EBA 契約締結により、オートデスクの製品やクラウドサービス、テクノロジーを自由に切り替えて利用可能な Token Flex と呼ばれるライセンス、CSM、コンサルタントが提供される。
※2 次世代デジタル基盤構想 : 2020年に構想され推進している日本設計のデジタル基盤の整備方針。BIMを含めた設計ツール類の設計基盤と、それを支える情報基盤の連携のあり方を、構造化データだけではなく非構造化データも含めて構築するための基盤構想。
※3 集合住宅設計BIMガイドライン及びBIMデータ類 : 工学院大学建築学部岩村雅人教授の協力の下、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)と日本設計が共同して、集合住宅への BIM 導入による生産性向上に向けた研究を実施し、研究で得られた知見の成果として、集合住宅では初となる設計 BIM ガイドライン及びBIM データ類を公開したもの。
※4 日本設計版環境DX:オフィス移転を機に働く場であるオフィスを、これからの働き方の新しい価値を発見するための試金石とするためのデジタル基盤。基盤にはデータのセンシングや管理、ワーカーとの双方向通信機能などが備えられており、本社オフィスを実験場にして計測・評価検証等ができる仕組み。