脱炭素社会の実現へ向けた建築物の木質化推進を目指した特許技術
意匠性を有した木質耐震壁
都市部に建つ建築物や、一定規模以上の建築物は耐火建築物とすることが求められます。そこで当社は、鉄骨造の柱・梁フレームに設置可能な木質材料による耐震要素を開発しました。この技術では、主要構造である柱・梁を耐火性、構造的に優れた鉄骨造とし、法規上、被覆が不要となる耐震要素を木材で構成することで、耐火建築物でも木材を意匠として活用することができます。
開発した木質耐震要素は、次の3つの特徴を備えています。
・靭性型ハイブリッド耐震要素
・特殊な材料・金物を使用しない設計
・デザインの可変性が高いシステム
この技術は汎用的でありながら、デザインの可変性を持たせることで、単純かつ共通の構造システムを維持しつつ、プロジェクトごとに異なる姿を取ることができます。このため、多様な建築シーンでの活用が期待されます。
壁の性能に大きく寄与する接合部には、上下の木梁の間に鋼管リングを設置し、木材のめり込みを活かした、せん断抵抗機構です。
この接合部の性能を確認するため、まずは接合部単体での簡易な要素試験を実施し、詳細な仕様を決定しました。その後、実物大試験を行い、壁全体の性能を検証しました。実大実験は、東京大学の稲山正弘名誉教授と青木謙治教授の技術指導のもとで実施されました。
実大実験の様子
意匠性を有した市松状木質天井
大規模木造建築の普及のための新規性の高い技術として、大規模木造建築では一般的な手法である鉄筋コンクリート造との混構造を容易に成立させる、市松状の天井構造および天井支持構造を開発しました。この技術は耐震性確保と空間のフレキシビリティーの両立に優れる木造の実現を支えるものとなります。市松状に配置された天井パネルは、木の下から葉裏を見上げるようなデザインが特徴です。この技術は、中大規模木造では一般的な手法である鉄筋コンクリート造との混構造で活用でき、学校の校舎などの中大規模の建物、オフィスなどの中高層建物、住宅やそのほかにも応用が可能です。当社が設計した「流山市立おおぐろの森小学校」で実装されています。
実装例:流山市立おおぐろの森小学校 図書室
この特許である天井構造および天井支持構造は、構造としては、梁を挟む床と市松状天井が木造部分の地震力を鉄筋コンクリート造の耐震壁に伝え、木造部分の柱が鉛直力を受け持つことで柱の位置の自由度を高めることで、意匠性と空間のフレキシビリティーを両立する構造です。また、この市松状天井は、照明や防災設備の配線、天井カセット型空調機をレイアウトできるなど、意匠、構造、設備を統合したデザインが実現できます。
市松状木質天井の構成 | 意匠・構造・設備を統合した天井の一例 |
本件に関する問い合わせ先
株式会社日本設計 広報室 Tel: 050-3139-7003 Email: kouhou@nihonsekkei.co.jp