レポート

歳月を経ても人々に開かれた「塔のある家」として

南面外観。手前が松川、左がシンボルロードの城址大通り。(撮影:川澄小林写真事務所)

富山駅から伸びるシンボルロードに面する富山市庁舎。
駅前広場からも見える高さ100mの塔と三角形の大屋根は、竣工から30年近く経った今も富山市のランドマークであり続けています。
その富山市庁舎を入社2年目の日本設計社員3名が訪れました。

Visitors:(写真左より)
福山 智大 インテグレイテッドデザイン部
伊藤 夏生 都市計画群 環境アセスメント室
中島 舜 構造設計群

富山市庁舎アトリウムを背景にレポーターの3名

 

富山市のランドマーク

東京から新幹線「かがやき」で2時間弱、富山駅を降りると、駅前広場から南に伸びる城址大通りの先に富山市庁舎の塔が早速お出迎え。

駅前広場から塔が見える

城址大通りは戦後の富山市都市計画のなかで主要な位置を占める通称「シンボルロード」で、市庁舎の南を流れる松川はかつて市の中心部を流れていた神通川の名残です。市庁舎はそんな新旧の都市軸の結節点に位置しています。富山市庁舎のはす向かいは富山城跡がある城址公園で、富山市庁舎南側の「ふるさとの森」の樹木と一体になって緑豊かな環境をつくりだしています。

シンボルロードからの外観。松川沿いの桜並木と、「ふるさとの森」の鬱蒼とした木々がつくりだす緑の連続。

シンボルロードから城址公園入口を見る。

 

伊藤:富山市はLRT (次世代型路面電車システム)の導入など、環境モデル都市としてまちづくりの先進的な事例で、2018年6月にも「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。その富山市において、都市軸に対する外部空間の取り方や城址公園との緑の関係など、富山市庁舎のランドマークとしての役割も感じます。
景観を変化させない、周辺と調和する建築が良しとされることが多いですが、富山市庁舎は逆に「風景をつくる建築」だと思います。東西の2棟は周辺の高さに合わせていますが、塔や屋根などその特徴的なかたちは街のいたるところから見つけることができ、シンボルとしての力強さを感じます。

「塔のある家」

アトリウムから北側を見る。(撮影:川澄小林写真事務所)

中島:中に入ってまず目に入るのが大きなアトリウムですね!このアトリウムは8層分の吹抜けで、最も高いところでは天井高さ50mもあります。

福山:南北の壁面は一面ガラスになっていて、北側にはトップライトがあるのでとても明るいです。また東西の棟に入る執務室は窓を介してアトリウムに面しています。直接外と繋がっているわけではなくても、この大らかな空間により、室内にいながら外にいるような独特の開放感を生み出しています。

 

アトリウムでは定期的にミニコンサートも開かれているそう。大空間に反響する音楽が人気なのだとか!

2棟をつなぐ渡り廊下からアトリウムを見学。

中島:別々の2棟と塔、アトリウムの屋根、渡り廊下はそれぞれが異なる構造形式でありながら連結されていて、当時としては構造的にもチャレンジングなものだったのではないでしょうか。塔を支える柱やアトリウム屋根の山形トラスなど構造体をそのまま見せる表現からも、構造担当者からの積極的な提案により実現したという設計時の様子がうかがえます。

福山:8階建ての2棟とそれをつなぐ三角屋根、そしてアトリウムから伸びる塔という色々な要素が複雑に組み合っています。また外観のつくり方も、シンボルロードに面した低層部・中層部・高層部の3層構成など、1980年代に席巻したポストモダン的な影響も感じます。その複雑な構成ゆえに富山市庁舎ならではの街への開かれ方や、様々な場所につくられた人々の居場所を実現しているのではないかと感じました。

当初、設計時に提案されたコンセプトは「塔のある家」でした。そこには、市庁舎は市民にとっての大きな家のような存在であるべきという想いが込められています。その一つの表現として、市庁舎が閉まる休日も南側の「光の広場」や展望回廊は開放できるよう設計当時から計画されており、現在も市民や観光客の憩いの場となっています。

ラウンジ。広場のまわりにはレストランやラウンジがあり、「開かれた庁舎」を体感。(撮影:川澄小林写真事務所)

光の広場。東棟足元は富山市の事業により壁面緑化が進められた。広場の池には大きな鯉がたくさん。

展望回廊。無料の望遠鏡を楽しめます。春にはシンボルロードの桜並木を見下ろす人気のスポット!

また通常は見学することができない7階の議場も特別に見学させていただきました。
正方形平面、ペンデンティヴドーム、ヴォールト天井など古典的なモチーフが使われた緊張感のある空間です。

議場。(撮影:川澄小林写真事務所)

伊藤:「ふるさとの森」の樹木はこの30年で大きく成長しましたが、建物自体は一見して竣工時とほとんど変わらない美しさを保っています。それは、市民や市庁舎で働く方々に愛されている証のように感じました。

 

一緒に訪ねてもらいたい!周辺おすすめスポット

富山市庁舎と合わせて今回レポーター3名が訪れた、周辺おすすめスポットをご紹介します。
富山市には徒歩圏内にたくさんの建築や見どころがありますので、是非訪れてみてください!

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2020年7月2日 特記なき撮影:日本設計広報室