ヒストリー

8. “環境”の未来を想う

そのスタートは、超高層ビルから。

建築や都市デザインの設計では、そこで使われるエネルギーのトータルマネージメントや温度、光、風などの環境設計が欠かせません。それらを担っているのが環境エンジニアたちです。空調、電気、照明から都市の環境制御システムの構築まで、快適で安全な総合的なエネルギー循環の仕組みを、独自の発想と新しい技術開発で提案・実現しています。私たちの環境エンジニアリングのスタートは、超高層ビルの環境性能を制御することからでした。限られたエネルギー源とスペースで、容量の大きな超高層ビル全体をまかなうための技術を生み出すこと。それは当時まだ誰も経験したことのない大きな課題でしたが、それをクリアしたことがその後の私たちの環境エンジニアリングの貴重な礎となりました。

新宿超高層ビル群

新宿熱供給地域図

「省エネ建築」だけでなく「創エネ建築」も。

1973年の第一次オイルショック、1979年の第二次オイルショック。1980年代に入ってからは世界的に地球環境問題が叫ばれるようになりました。そして、まだ記憶に新しい東日本大震災。それぞれの時代によって、省エネルギー、コスト削減、環境配慮型の設計など、環境エンジアリングに求められるニーズは刻々と変化してきました。1998年に竣工した「品川インターシティ」では、それまで捨てていた熱を再利用する「コジェネレーション・システム」を導入すると同時に、複数の建物の昼夜のエネルギー消費量の違いに合わせてお互いにエネルギーを融通し合う地域を誕生させました。また、2002年に竣工した沖縄の「糸満市庁舎」では、沖縄の気候を生かして、建物全体に太陽光発電パネルを組み込んだ巨大なルーバーで建物全体を覆うことでエネルギーを創出。「省エネ建築」だけでなく「創エネ建築」を実現したプロトタイプとなっています。

品川インターシティ
(撮影/川澄・小林研二写真事務所)

糸満市庁舎
(撮影/川澄・小林研二写真事務所)

“周辺環境と連携した環境エンジニアリング。

2011年の東日本大震災を経験した日本では、再生可能エネルギーの有効活用が一段と注目を集めるようになりました。島根県の「雲南市庁舎(2015年竣工)」では、地域の豊かな森と川の恵みを生かした環境建築を実現しました。森林から採れた木質チップを利用したバイオマスエネルギーや地下水の熱源利用を実現。さらには、地下水を大きな外壁ガラス面に流すなど、エネルギー的に工夫されたデザインで省エネルギーや環境負荷低減を可能にしました。環境エンジニアリングの発想や考え方は、建物だけで完結するのではなく、地域の方々と連携しながら周辺環境を生かすという先駆的な事業を生み出したのです。

雲南市庁舎
(撮影/川澄・小林研二写真事務所)

常に社会の要請に応えるために。

今後は、まちづくりとエネルギー施策を一体化することで、都心の新たな将来像を提案していきたいと考えています。限られた地域だけでなく都市単位でエネルギーを共有し、それぞれの建物やエリアの電力および熱需要に合わせて効率的にエネルギーを供給する。これが実現すれば、エネルギーの最適化を都市全体で実現できるだけでなく、CO2の大幅な削減など環境負荷の低減にも貢献できます。そのためには、行政をはじめ、電力・ガス会社との協働はもちろん、エネルギープラントをまちなかに設置するために民間企業や地域の方々との協力も必要です。それらの間に入り、全体をコーディネートするのも私たちの仕事です。そして今私たちは札幌市の要請を受けて、都市単位のエネルギーの最適化に取り組んでいます。時代を先取りしながら、様々な環境と向き合いながら、常に社会の要請に応えてきた環境エンジニアたち。その技術とコーディネート力は、私たちのかけがえのない財産として、世代から世代へと受け継がれています。

札幌都心エネルギーネットワーク構想